玉響なる風は鳴る
「聞かないさ。話したくないなら、無理に話さなくていい」

そう言って、風音は目を閉じた。風が吹いて、風音と葉月の髪が揺れる。

「……風音って、思っていたよりも良い奴なんだな」

「……」

風音はそっと目を開けると、葉月の方を見た。葉月と目が合い、葉月はすぐに目を逸らす。

「……1つ聞いていい?……風音は女子なのに、どうして男子の制服を着てるの?」

「……男の子、だから」

素直に葉月の問いかけに、風音は答えた。風音は、体の性と心の性が不一致なのだ。

「そうなんだ……風音の両親は、知ってるの?性別のこと」

「知ってるよ。母さんは、僕の性別が一致していないことに気付いてたみたいで、カミングアウトした時……『風音の好きに生きたらいい』って言ってくれたんだ。この学校は、男女好きな制服を選べるから、ありがたかったな」

「……そっか。羨ましいな……僕も、カミングアウト出来たらいいんだけど……」

そう言って、葉月は悲しそうに微笑む。風音は、無言で葉月を見つめた。

「……僕は、中性なんだ」

そう言って、葉月は空を見上げる。

「中性、か……」

風音がそう呟いた時、悪霊の気配を感じ、風音は辺りを見渡した。
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