玉響なる風は鳴る
「……」

風音が隣を見ると葉月は空を見上げたまま目を見開いており、風音も空を見上げる。そこには、風音が先程見た悪霊がいた。

「……葉月!」

風音は葉月の腕を引っ張ると、風音の背中に隠す。そして、ポケットから扇子を取り出した。

風音は、扇子を開くと風を起こす。その風に耐え切れなくなった悪霊は、吹き飛ぶと塵となって消えていった。

ふぅ、と息を吐いた風音は片手で扇子を閉じると葉月の方を見る。

「……風音、後ろ!」

葉月の言葉に風音が後ろを向くと、風音の目の前に悪霊がいて、悪霊は風音を吹き飛ばした。風音は体制を整えて地面に着地すると、腕の傷に目を移す。

(さっきの攻撃で付いてしまったのか……母さんに、何と説明しようか)

そう思いながら、風音は悪霊に目を移した。悪霊は、立ち尽くしている葉月を襲おうとしており、それを見た風音は葉月に近づくと、咄嗟に葉月の目の前に立った。

「……風音……?」

「葉月は、僕が守る!例え、どれだけ傷ついても構わない!!」

「……っ!」

風音の言葉に葉月の胸は高鳴り、葉月はそっと胸に手を当てる。

(……何だろう、この感覚……)

葉月が考えていると、葉月の近くに風音が持っていた扇子が落ちた。
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