今夜もあなたと月、見ます。


その後は…特に会話はなかった


ただ、観覧車を降りるときに響紀さんが

『ごめん』と言ったから

なんだかそれが嫌で

『謝るのやめてください』

って言った

そしたら響紀さんが

『じゃあ、ありがとう』

って言ったから

私は

『はい』

って言った


それだけだった。



いつもの駅までバイクで送ってもらって

それから別れ際にもう一度だけ、彼は私にキスをした

『またね』

『はい、また』

それで今日は終わった


あっという間の1日だった

信じられないくらい早かった

信じられないくらい楽しかった

信じられない…

ことが起こった



ああああああ

胸が痛い


ああ…

本当に、好きすぎて辛い



無意味に胸を押さえながらトボトボと帰路を行く


なんだか暗いな

いつもより夜が暗い気がして空を見上げた


「…月がない」

見上げた空はただ暗いだけのものだった

でもそれに反して、私の中は眩しいくらいに明るい



新月?

いや、違う。

この前調べたんだ


「今日は、(つごもり)だ」





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