聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
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「はぁ? 名前の由来?」

 玲奈の母親、佐和は心の底から不愉快だと言いたげに顔をゆがめた。自分の名前の由来を聞いてくるという定番の宿題だ。まさかここまでの反応をされるなんて、玲奈は思ってもいなかった。

「適当に書いておいてよ。響きがいいとか、なにかあるでしょ」

 小学校四年生の玲奈はなにも言わなかったが、不満が顔に出てしまっていたのだろう。それを見た佐和の表情が凍る。ぞっとするほど冷たい声で彼女は言った。

「だって、私は知らないもの。由来なんて知らない」
「玲奈の名前はお母さんがつけたんじゃないの?」

 では、離婚した父親がつけたのだろうか。玲奈は純粋に疑問に思っただけなのだが、それが彼女の怒りを爆発させた。いつもは冷淡な佐和が感情的に声を荒らげ、ものすごい形相で玲奈を睨む。

「私じゃない! そんな名前、つけてないわ!」

 実の母親のその言葉は玲奈の心に決して消えない傷をつけた。それまで気に入っていた自分の名前がいっぺんで嫌いになるほどに。

(そんな名前……だから、お母さんは私の名前を呼んでくれないの? 名前が嫌いだから? それとも嫌いなのは……)

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