聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「玲奈、おいで。一緒に入ろう」

 バスルームから顔をのぞかせた十弥が玲奈を呼ぶ。十弥はいつも一緒に風呂に入りたがる。最初は恥ずかしいからと断っていたが、少しずつ慣れてきた。とはいっても、明かりのもとで裸を見られるのはどうにも気恥ずかしい。

 玲奈は急いで白い泡の立つ浴槽に身体を沈めた。バスルームからも夜景がのぞめる。宝石箱をひっくり返したようなきらめきに玲奈が見入っていると、あとから湯舟に入ってきた十弥に背中から抱きしめられた。

「ふ、副社長」
「十弥、だろ」
 
 その呼び名は、裸を見られる以上に気恥ずかしい。玲奈は頬を赤く染め、消え入りそうな声で言った。

「と、十弥……」

 彼はうれしそうに目を細めると、そっと玲奈のお腹に触れた。

「こんなに細いのに、なかに子どもがいるなんて不思議だな」
「お腹が目立つようになるのって、思っているより遅いから。五か月とか六か月とかそのくらい」
 ママになった友人たちを思い出しながら玲奈は言った。玲奈のお腹が大きくなるのは、まだこれからだ。
< 55 / 111 >

この作品をシェア

pagetop