聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「お喋りに夢中で大事なことを伝えてなかったわ。玲奈さん、十弥。結婚と妊娠、本当におめでとう!」

 玲奈は慌てて居ずまい正して祥子に頭をさげた。

「はい! ありがとうございます。これから、どうぞよろしくお願いします」
「うふふ。赤ちゃん、楽しみねぇ。家族が増えるより幸せなことってないわよね」

 祥子の弾んだ声が玲奈の胸にしみいる。子どもの誕生をよろこぶ言葉は玲奈がなによりも欲しかったものだった。

(お母さんにもそう言ってほしかったな。一緒に喜んでほしかっただけなのに)

 玲奈の目尻から思わず涙がこぼれた。その様子からなにかを察してくれた祥子は十弥に顎で指示を出す。

「どうしてもおいしいチョコレートが食べたくなっちゃった。コンビニのじゃダメよ。駅前に洋菓子店があったでしょ。そこで買ってきて」

 十弥はややためらっていたが、この場は祥子に任すと決めたようでおとなしく部屋を出ていった。ふたりきりになると祥子は優しく玲奈の背中をさすった。その手のぬくもりが十弥にそっくりで、玲奈は心の底から安心できた。

「女子会もいいわね!」

 玲奈は涙をぬぐいながら、小さく「はい」と返事をした。

祥子は穏やかな声で話しはじめた。

「妊娠って不思議よね。すごく幸せなはずなのに、不安でたまらなくなったりする。私ね、結婚は早かったんだけど、なかなか妊娠できなくて……だから十弥は待望の妊娠だったの」

 できちゃった結婚に近い玲奈たちとは真逆だ。玲奈は祥子の物語に黙って耳を傾けた。祥子が十弥を妊娠したのは結婚六年目だったそうだ。

「望んで望んで、やっと妊娠したのに、いざとなると怖くなっちゃってね。なにかの間違いなんじゃないかって思ったりして」
「私も、最初はきっとなにかの間違いだって思いました」

 玲奈と祥子はクスクスと共犯めいた笑みをかわし合った。
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