聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 祥子はう~んと伸びをして天井を見上げる。

「妊娠したからってすぐ母親になれるわけじゃない。少しずつなのよね。一歩進んだと思ったら五歩くらいさがっちゃう日もあるけど、みんなそんなもんだから。気楽にね!」

 祥子の言葉はあたたかくて、十弥の優しさは彼女譲りなのだなと玲奈は思った。

「私、自分の母親とあまりいい関係を築けていなくて……だから祥子さんがいてくれて、すごく心強いです」

 祥子は気遣うような口調で玲奈に言う。

「玲奈さんのお母さんは女手ひとつであなたを育てたのよね。もしかしたら、寂しかったのかもしれないわね。子育てはすごーく大変だから、分かち合う相手が必要だわ。その相手は別に夫でなくてもいいんだけど」

 夫でなくてものところで、祥子は悪戯っぽい笑みを浮かべてみせた。

(寂しかった……私もずっとあの家で寂しい思いをしていたけど、もしかしたらお母さんもそうだったのかな? 私たちは一緒にいたのに、お互いの孤独を埋め合えなかったのかもしれない)

 玲奈の父親はまだ小さかった娘を捨てて出ていったのだ。それが佐和にとってどれだけの衝撃だったことか。

(十弥のいない子育てなんて、私にはもう考えられないもの)

 祥子はその夜はマンションのゲストルームに宿泊した。寝室でふたりきりになると、十弥は心底申し訳ないといった顔で玲奈に謝罪をした。
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