ハツコイ〜僕らははじめてだった〜
「ですって。お父さん。」

お母さんがゆっくりと箸を置いて
お父さんの方を向いた。

「…舞もそんな歳になったんだな。」

お父さんも箸を置いて舞の方を見た。

「舞のことも、克くんのことも
信頼しているし、もう自分達のことは
自分達で考えられる歳だと思う。
お互いのことをこれからも大切に
できるんだったら、舞に任せるよ。」

お父さんは真剣な顔でそう言った。

「…ありがとう。」

「でも、ま、嫌だけど。」

お父さんがツーンと顔を背けた。

「じゃあ、その日は映画でも行って
久しぶりにディナーでも行きましょう。」

お母さんがお父さんの機嫌をとってくれる。

「お母さんもありがとう。」

舞がぺこりと頭を下げた。

「ふふふ、舞も克くんも本当真面目よねー。
お母さんは、この頃黙って出かけてたわ。
反省、反省。」

「ふふふ、そうなの?」

「うん。皆が寝静まった頃を見計らって
窓から脱出ってね。若気の至りよ。」

「本当けしからんよな?舞。」

「お母さんと比べたら真面目かも。」

「調子に乗らないの。」

そう言って皆で笑った。
家族には、言いにくいことも
ちゃんと正直に話せると
やっぱりいいなと思った舞だった。
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