西岡三兄弟の異常な執着
「ん?」
朱雀の雰囲気が……一瞬で闇に落ち、た。
「え………す、ざく…?」

「そんなこと、ほんとに…知りたい?」

「あ、いや…
ほ、ほらっ!
私また、気絶しちゃったから覚えてなくて……
また悪魔みたいな朱雀を見たの……
あれも夢だよね?」
「………」
朱雀は、何も言わず微笑んでいる。

「朱雀?」
そしてまた朱雀は、花苗を組み敷いた。

「現実だよ。
理太郎は、もう二度と…花苗と会えないとこにやった。
あ、あとね!篠田って大臣も!
二度と俺達の前に現れないようにした。
この“俺が”」
「嘘…」
「だって、もういらないよね?
俺の花苗に触ったんだよ?
そんな人間は、いらないんだよ。
花苗は俺の宝物。
俺の命その物。
俺が生きていく為の、分身」

「朱雀…怖い……」
ブルッと震える花苗。

「あ、そうだね!
花苗、また“僕”と愛し合おう!」
そう言った朱雀は、またいつものように優しい雰囲気を纏い口唇を重ねてきたのだった。


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朱雀はどんな僕も僕だよと言う。
それはそうなのだが、明らかに別人だ。

どっちが“素”の朱雀なのだろう。

「黄河さん、起きてる?」
黄河はだいたい、睡眠時間は三時間程でほとんど寝ない。
その日の夜更けに花苗は、黄河の部屋に向かったのだった。
「入っていいぞ!」
ノックをして、ドア越しに声をかけると中から黄河の声が聞こえた。

「ごめんね…こんな遅くに……」
ドアを開け中に入ると、黄河は窓際のソファに座り煙草を吸っていた。
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