西岡三兄弟の異常な執着
「やっぱり、本当の朱雀は“あの”朱雀なんだ……」
呟く、花苗。

「それは違うぞ」

「え?」
黄河は花苗からまったく目を反らさず、微笑んだまま。
「どっちも朱雀だが、あえて言うなら“いつもの”朱雀が朱雀だぞ」
「そうなの?」
「あぁ…朱雀は本当は、三人の中で一番優しい奴だから。
ただ心が真っ直ぐなだけ。
だから事を起こすのに見境がなく、戸惑いも躊躇もない。良いことも悪いことも。
それが冷酷な朱雀を作っただけだ。
そんな朱雀の姿を見た紫苑に、西鷹組の若頭にさせられたんだ」
「そうだよね…朱雀、とっても優しいもんね!」

「だから、朱雀を信じてやれ!
朱雀を支えてくれるんだろ?
だったら、放れないでずっと傍にいてやってくれ」

「うん!黄河さん、ありがとう!
ごめんね、こんな遅くに」
ニコッと笑い花苗が言う。
それにつられるように、黄河も微笑んだ。

「黄河さん、寝ないの?」
ドアを開けながら花苗が声をかける。
「んー、もう少し起きてる」
「………」
「花苗?」
「大丈夫だよ」
「ん?」
「まだ…寝るの怖い?」
真っ直ぐ黄河を見て、花苗が言う。

「まぁな。母さんみたいに二度と起きれなくなる気がしてな!
………てか、早く朱雀の元に戻れ!
アイツが今起きたりしたら、また壊れる!」
「うん。
…………黄河さん、忘れないで」
「ん?」
「私達がいるよ!」
「え?」
「朱雀も真白くんも、私も!
黄河さんを守るよ!」
「花苗…」
「だから、不安な時は言って?
昔みたいにたまには、四人で川の字で寝ようよ!」
微笑む花苗。

「…………あぁ、ありがと。花苗」
「ん。おやすみなさい!」
小さく手を振り部屋を出た花苗。

「ほんと……花苗には、敵わねぇ……」
黄河の呟きが、小さく響いたのだった。
< 87 / 93 >

この作品をシェア

pagetop