天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
わだかまりは溶けて――side勇悟

 二月十二日、バレンタイン近くの日曜であるその日に運よく休みを得られた俺は、午後に絢美の自宅を訪れた。

 絢美の母親に招かれて玄関から上がると、途端にチョコレートの甘い香りが鼻先をかすめる。

「あの子、いつもは休みでもつわりであんまり元気がないくせに、今日は勇悟さんにどうしても手作りのお菓子を渡したいんだって、朝から張り切ってキッチンに立っているの。よっぽど勇悟さんにぞっこんなのね」

 絢美のお母さんは廊下を歩きながらそう語り、ニヤニヤした目つきで俺を見るので照れくさくなる。

 絢美とは先日電話で想いを伝え合い、その後妊娠の件も互いの両親に打ち明けた。

 両親たちは初孫に会えると大喜びで、急いで結婚の準備をしなければと本人たち以上に盛り上がっている。

 俺たちが結ばれたのを家族の中で喜んでいないのは、聡悟だけだった。

「じゃ、絢美のことは勇悟さんにお任せしますね。私は出かけますし、夫も仕事なのでごゆっくり~」

 絢美のいるダイニングキッチンまで連れてこられると、お母さんは語尾にハートマークがついているような甘い口調で言って、せわしなく部屋を出ていく。

〝どうぞいちゃいちゃしてください〟と言われた気がして、逆にやりにくい。

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