天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「えっ? 違っ……まだ、プロポーズされただけで!」
慌てて否定してから、しまったと思った。
与える必要のない情報をつい漏らしてしまった……!
「きゃ~、そうだったの! でも聡悟さんなら迷うことないじゃない。甘いマスクに、紳士的な立ち居振る舞い。安定したオペの腕と優しい診察で、病院でも患者さんに好かれている。お母さんなら絶対に喜んで結婚しちゃうわ」
淡々と玄関で靴からスリッパに履き替える私に、母はしつこく腕を絡めながら猫なで声を出す。
だったらお母さんが結婚すればいいでしょ、というセリフが喉元まで出かかったが、なんとか飲み込んだ。
「聡悟くんが素敵な人だっていうのは私だってわかってるよ。でも……」
「お父さんも貴船さんも、絢美と聡悟さんが結婚するのを今か今かと待っているわ。あなたたちの結婚が決まれば、貴船さんも安心して聡悟さんに病院を任せられるもの」
病院……。そうか、とうとう聡悟くんが跡を継いで院長になるんだ。
現在彼の父が院長をつとめ、聡悟くん自身も心臓血管外科医として勤務している『貴船総合病院』は、横浜市内の地域中核病院。大学病院とも連携し、地域の人々に高度な医療を提供している。