銀のスプーン
かちゃん。

グラスを交わす甲高い音と共に、酌は開かれた。

ドレスの裾を持って、面倒な歩行を行う。


何故こんなことをしてるのかしら。


幾ら思っても此処にいる事実は変わらない。

甘いフルーツの味は、もう舌が受け止めない。

『酔っちゃったかな』

ドラマでしか聞かないセリフを口にしながら、コツ、コツ、とヒールが地を叩く音を引き連れ

びゅう ゝ と風を浴びる。

髪は風に身を任せ、揺らりゝと靡き、月明かりが私を照らすも、影に見える髪のカーテンは美しく。



暫しして、酔いも程よく覚め、皆が杯交わす踊り場へ戻る。

何やらガヤガヤと、声がいつもより騒がしい。

なにも異質なところはない。

” 良かったらどうですか? お嬢さん ”

1人の、スーツの男性が私のグラスに酒を注ぐ。

淡い桃色に柔らかな果物の香りが漂う。

『 いただきますね。 』

と、グラスに口付けをする。

度数が強いらしい。 二口程で、頭が揺れるような感覚を覚える。

もう一風浴びようか。

階段を登る足を進める。


『 あれ? 』


いつしか体が動かなかった。

ほろ酔い気分で、私は30m下の階段を下りた地面と口付けをした。




『 今までで1番 ”甘い酒” ね 。 』



赤い赤い酒は、私から溢れていた。
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