『君』の代わり。

「耀先輩、中学の時から、ずっと好きでした

高校入ったら、先輩と付き合いたくて
頑張って同じ高校に入りました

私と付き合ってもらえませんか?

先輩の彼女にしてください」



桜の花は
ほとんど散って葉桜になった頃だった

先輩の薄茶に染まった髪に花弁が1枚落ちた



ずっと大好きだった先輩が

眩しくて

よく見れなかった



深呼吸して

先輩が言った



「君、同じ中学にいたっけ?」



伸びた前髪が鬱陶しそうだった



「え…はい…
体育祭の時に一緒に委員やって
それで…」



「ごめんね、覚えてないわ」



痩せたからわかんない?

あ!髪切ったからかな?



「あの…私と付き合ってもらえませんか?
友達からでも…」



「んー…考えとくね」



先輩の左耳のピアスが揺れた



「あ、はい、ありがとうございます」



そーだよね



今日告って

いきなり今日返事もらえるってないよね



しかも先輩

私のこと覚えてなかった



体育祭の委員の時

めっちゃ優しかったのに…



「耀〜!今日どぉする?」



後ろから甲高い女子の声が聞こえてきた



「いつものカラオケで…」



「あそこカメラついてて
学校に通報するじゃん!」



「だってオレ、バイトの給料日前だから
ホテル代出せないし…」



ホテル代?



「もぉー…耀の部屋は?」



先輩の部屋?



「オレんち妹いるし…」



「えー、じゃあ、どーする?」



「公園?」



「公園?!ヤダー」



え…

あの…

それって…



え…

さっき、考えとくねって言ってくれたのに…

先輩、彼女いるんですか?



先輩と話してる人は

髪が長くて先輩と同じ薄茶に染まってた


内履きの色が先輩と同じ2年生


スカートが短くて

緩く締められた制服のリボン


そのリボンの下にある胸が大きいのが

制服を着ててもわかった


私なんてダイエットする前も

あんなになかった



「じぁ、友達がバイトしてるカラオケにしよ
融通きくから…」



「もぉ…わかったよ
カバン取ってくるね♡」



走って階段を上がって行った

揺れた髪から甘くて色っぽい匂いがした



「あー、とりあえずLINE交換しとく?
そっちも考えてみてよ」



「考えてみて…って
今の人、先輩の彼女じゃないんですか?」



これから

カラオケで

…するんですよね?



「彼女じゃないよ
友達

君、名前なんだっけ?」



「あ、朝日奈(あさひな)です!」



「朝日奈ちゃんも友達になんない?
友達なら、いつでも募集してるから…」



友達?



友達って

そーゆーことする友達?



「耀〜、おまたせ♡」



「あー、じゃあ、またね
気が向いたら、いつでも声掛けて!」



「もぉ、耀〜
また〜?
1年生にまで手出すの?」



「無理に誘ってねーし…」



「今日ね、新しいブラしてきた♡」



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