腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
改めてそう聞かれると、下着にこだわりなんてない。いつも適当に安くてサイズの合うやつを買っていたし、彼氏がいる間は彼氏の趣味で選ばせることが多かった。

そんな私の考えを見抜いたのか、鷹峯さんは長い人差し指を顎に添えて何か考え出した。

「では、こんなのはどうですか?」

鷹峯さんがマネキンの身に付けていた下着に目をやる。淡いレモンイエローで、レースとシフォンがさり気なく飾られていてお洒落なのに派手じゃない。

「あ……可愛い、と思います……」

素直に、そんな感想が出た。

「あらぁお客様! そちら当店でもとても人気で各サイズ一点しか在庫がないんですよぉ〜。よろしければ試着室へどうぞぉ!」

どこからともなく現れた店員さんが、高い声で早口にそう言うと私を更衣室へ押し込んだ。目視で私の胸のサイズもバッチリチェックされた。できる店員さんだ。

私はトップスとブラを外すと、レモンイエローのそれを身に付ける。しっかりとホールド感もあるし、何より肌も明るく見えてとても可愛い。

「お客様着け心地はいかがですか? まぁ素敵! ほら彼氏さんも!」

「あ、いえ私はっ……」

戸惑うような声が聞こえたかと思うと、鷹峯さんは店員さんによって更衣室に押し込まれてきた。

「きゃっ、ちょっと……!」

「では、ごゆっくりぃ〜」

店員さんが含みのある声音でそう言ってすぐにカーテンを閉めてしまった。ごゆっくりって、更衣室で一体何させる気なんだ。

「あ、あの、あの、あんまりこっち見ないでくださいっ……!」

私は涙目になりながら、為す術もなく胸元を隠して鷹峯さんに背中を向ける。それでも三面を鏡に囲まれているから完全に隠すことはできなくて、私は身を縮ませる。
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