腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
私は柊真の家を出ると、駅前のカフェに向かう。土曜日の街中は、駅に近付くほど人も多くなっていった。

「どうしましょ、私、鈴白さんに悪いことしちゃったわね……」

柊真と私は、いわゆるセックスフレンド。お互いに割り切った関係で、そこに恋愛感情とかは一切ない。

医者なんてやってるとただでさえ忙しいのに、女医はあまりモテないしそもそも出会いがない。だから寂しくなった時は、研修医時代からこうして柊真と関係を持つようなった。

柊真から連絡が来ることもあるし、私から連絡して抱いてもらうこともある。イケメンで、後腐れなくて、しかも元々外科医だったからか指先が器用だし上手い。

的確にイイところを分かってくれるし、前戯は丁寧だし、サイズも持続力も申し分ないし、ピロートークも機知に富んでいて楽しいし(たぶん、向こうがレベルを合わせてくれている)。

まぁ性格はちょっと難アリだけど。

とにかく柊真と会ってセックスすると身も心もスッキリする。今日も午前中だけの仕事だったけど、変な患者に絡まれてイライラしたから急遽連絡したら、柊真も当直明けで帰るところだと言っていたから部屋に出向いた。

「あの時の、柊真の顔……」

鈴白さんと同棲していることは知っていた。でも恋愛関係ではないと言っていたし、彼女は夕方までバイトで帰って来ないと聞いていたからホテルまで行く手間を惜しんで部屋に行った。

でも、私の身体に触れる柊真の手付きが、普段と違うことはすぐに分かった。たぶん彼は、あの時私に彼女を重ねていたに違いない。

普段から前戯はこれでもかってほどしてくれるタイプだけど、今日みたいに強引に何度もイかされることなど今までになかった。きっとあの子をぐちゃぐちゃに犯したい、そんな彼の欲望の現れだったんじゃないだろうか。

ドアが音を立てて彼女に見られたのだと気付いた時、彼は表には出してないつもりだっただろうけど、今まであまり見たこともないくらいの渋い顔だった。たぶん、動揺していたと思う。

「うふふ……柊真と鈴白さんかぁ。うん、推せるわ」

ちょっとやらかしちゃったとは思ったけど、私のおかげで二人が急接近するなんてこともあるんじゃない?

そうなったら面白すぎる。

散々指だけでイかされたこともあってか、今日のイライラはセックスなしでもすっかり吹き飛んでいた。







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