腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
最初は背中や腹部を撫でていただけの指先が、次第にピンポイントで敏感なところに触れてくる。その度に私の身体がびくりと跳ね上がり、どんどんイイところが暴かれていく。

「ふふ、もうこんなに濡れてますけど」

「んぅ……」

同意したとはいえ、ここまでノンストップで身体を翻弄され、息もたえだえの私に鷹峯さんは余裕の笑み。一度「私の」で濡らした指先を、わざとらしく見せつけてくる。

恥ずかしくて、おかしくなりそう。

「私、怒ってるんですよ?」

鷹峯さんの細くて長い指先が、私の一番敏感なところを擦る。

「ぁっ……!」

「明らかにダメ人間だと分かる元彼からの連絡にほいほい応じて、家に呼んで」

身体が一気に熱くなる。ダメ、そこされたら、私っ……。

「挙句あそこまで口汚く罵られて、殴られて……馬鹿ですねぇ、本当。今まで私がどれだけ必死に貴女を抱くのを我慢していたと……ああ、もうイきそうですか?」

あ、あ、あ、ダメ、もう。

「っ……!!!!」

目の前に閃光が走る。こんなに急速で、雷のように鋭い感覚は初めてだった。

「あーあ……随分早かったですねぇ」

分かってたくせに、確信犯のくせに、鷹峯さんは白々しく飽きれたように笑ってみせる。

「まだダメですよ、こんなんじゃ許してあげませんから」

私を組み敷く彼の笑みは、綺麗で、だけど猟奇的で。

「はぁ、まったく……医者の性なんでしょうかねぇ……担当患者のことは、身体の隅々まで知っていないと気が済まないんです」

「んぁっ、……」

次の瞬間、とろとろに熱くなった私の奥深くに、さらなる熱が飲み込まれていく。

「はぁっ……ん、鷹峯、さんっ……」

「……、もっと力、抜いてください?」



食べられる。



捕食される小動物のように、私は脅えて。



でも、私の全てを食べ尽して欲しい。隅々まで、知って欲しい。



肉食獣の牙をたてる彼を、ただ呼吸を堪えて受け入れた。













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