ファーストソング
優しい姉の行動に、心が少し温まる。

本当に私は周りの人に恵まれている。
お母さんもお父さんも仕事は上手くいっていてお金に困ることはないし、お姉ちゃんはよく勉強を教えてくれた。

脳外科のスペシャリストの櫻井先生もいて。

その上、佐久間夏輝とも出会えた。

本当に恵まれている。


「ある人にね、曲を作って欲しいって頼まれたの。」
「ある人…?」
「うん。あ、怪しい人じゃないの。同い年の男の子。」
「男…。」
「最初は断ったんだけど、熱意に負けて、1曲だけなら作ってもいいかなって思って…。」
「…千冬。もしかして…。」
「え?」
「ううん。何でもない。…経緯は理解したけど櫻井先生の言う通りにするんだよ?そうすればお母さんたちには言わないから。」
「本当!?」
「勿論。お姉ちゃんが約束破ったことある?」
「ううん!ないよ!」
「じゃあ、信用できるでしょ?」
「うん。ありがとう!お姉ちゃん!」
「よし。じゃあ私は今日帰るけど、また週末にお母さんたちくる予定だから、それまでに何か欲しいのがあったら連絡してね。」
「了解!」


そう言って、お姉ちゃんは病室を後にした。

佐久間夏輝も流石に1日じゃ録音できないよね。
分かっていたとはいえ、騒がしさがなく静かな1日を過ごした。
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