ファーストソング
俺は小さく「ありがとう」と呟いた。


このありがとうには色々な意味が込められている。

俺の無知を許してくれてありがとう。
俺の曲を作ってくれてありがとう。
千冬ちゃんの意思で俺といることを選んでくれてありがとう。
俺を夢を応援してくれてありがとう。


「どーいたしまして。」


その言葉を聞いて涙が出てくる。

お互いぐしゃぐしゃの顔で笑っている。
涙と笑顔が自然とでてくる。

止まらない。

けど心はとてもスッキリしている。


━ガラ
「こら!まだいたんですね!もう面会時間は過ぎてますよ!」
「鈴さん。」
「っげぇ。」


扉が開く音がして、バッと振り向くと後ろにはいつも俺を叱るナースさんがいた。


「ふふ。また怒られてるじゃん。」
「え、俺だけが悪いの!?」
「そうですよ!ほら、でたでた!!長瀬ちゃん、またあとでご飯もってきますね。」
「はーい。」
「ちょ、ちょ押さないでくださいよ!!」
「ほらほら!!」


そう言って病室の外へ問答無用に連れてかれる。
あぁ、また説教されるとげんなりすると、押されながら「長瀬ちゃんと友達になってくれてありがとう」と言われた。

俺はその言葉に驚きながらもこう返した。


「俺が友達になりたかったんです」


ってね。
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