ファーストソング

疲れたのか千冬は「ふぅ…」と息を吐いた。

「疲れちゃった?」
「うん。 久しぶりの外出だしね」
「じゃあ花火の場所まで行こう! そこなら座れるから休憩できると思うよ!」
「うん!」

少し歩きバスに乗る。
そのバスからは多くの人が降りていき、その中には浴衣を着ている人がちらほらいた。

「なんでバスに乗るの?」
「うーん。 バスのが楽だからかな」
「みんな降りてたけど?」
「だいじょーぶだって! 次で降りるからさ。 あ、降りるボタン押して」
「え! 押していいの?」
「勿論!」
「え、えっと…えい」

千冬恐る恐る押すと《次止まります》と自動音声が聞こえる。

「バス停一個分だけ?」
「な、次っていっただろ?」
「そうだけど…。 でもここ丘だよ?」

バスから降りるとすぐ階段があり、そこを上ると小さな丘の頂上にたどり着く。
そこにはベンチが数個あり、その一つに座ると千冬に手で座るように合図する。

「もう、どういうことなの…?」

小さく文句言いながら千冬は合図されるままにベンチに座った。
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