幼馴染 × 社長 × スパダリ
そんな気休めみたいな言葉に私は苛立った。
何にも知らない人に言われたくはない。
「何も知らないくせに、慰めなんて止めてくれる!」
その男は怒っている私を見てクスクスと笑っている。
私は立ち上がり、その男へ近づいた。
そして、手を上げた瞬間に私の手首は男に押さえられた。
「…あっぶ…ねぇ…」
その男は私の手首を離すと、ヒラリと立ち上がった。
そして、置いてあった紙のコースターに何か書き始めた。
「これやるよ…よければこの会社で働けば?君のことは人事に言っておくよ…」
紙のコースターを私に手渡すと、クスッと笑いながら店から出て行ってしまった。
(…バカにしてるの!腹が立つ!…)
紙のコースターを見ると、会社名と住所、電話番号が書かれている。
そして男の名前が書かれていた。
『 株式会社リョースケ、東京都中央区…、03-●●●●‐●●●●、二階堂涼介 』
どうせ騙されているとしか思えない。
バーで酔っぱらいの女の就職を斡旋してくれるなんてありえない。
私はとりあえずポケットに入れた。
「マスター、もう一杯お代わりお願い…」
しかしマスターは酔っぱらいの私を心配したのか、黙ってタクシーを呼んでいた。
マスターは本当にお父さんのような人なのだ。
「萌絵ちゃん、タクシー代は僕が奢るからタクシーに乗ってもう帰りなさい。」
マスターに店から押し出されて、無理やりタクシーに乗せられてしまった。