幼馴染 × 社長 × スパダリ

ピロピロピロ…

携帯の聞き慣れたアラーム音が聞こえる。
目を開けた途端に、こめかみにピキッと痛みが走る。

(…昨日は飲みすぎたなぁ…二日酔いだ…)

そしてベッドから立ち上がろうとした時、床に紙のコースターが落ちていた。
コースターを拾い上げ、昨日のことを思い出す。
酔っていたせいか、鮮明には覚えていないが、男がこのコースターをくれたことは覚えている。

寝起きの頭でボーっとしながらコースターを見つめた。


「どうせ騙されているなら、騙されてやろうじゃない!」


私は一人で呟くと、出かける準備を始める。
もちろんコースターの会社に行ってみるのだ。

設計事務所に電話をして半日休を取った私は、髪をキュッと縛り気合を入れる。

たとえどんな小さな会社でも、ボロボロの会社でも働けるなら有難い。
騙されて笑われても構わない。


早速、コースターに書かれている住所を探す。
大きなビルの立ち並ぶオフィス街だ。
コースターの番地をたどりながら、その住所に向って歩いて行く。


すると、目の前には50階以上はありそうな高層ビルが建っていた。
入り口の所に会社名が書いてある。
しかも、このビル全てがこの会社のようだ。


『株式会社リョースケ』

(…う…う…うそぉ!!)

こんな大きな会社だったとは驚いた。
あの男はここで働いているのか?


受付には美しい女性が2人座っている。
私がおずおずと近づくと…

「いらっしゃいませ、どちらにご用事でしょうか?」
女性がニコニコと笑顔で話しかけて来た。

「…あっ…あの…こちらに…二階堂涼介さんはいらっしゃいますか?」


女性たちは、いきなり怪訝な表情に変わる。
やはりそんな人はいないのだろうか。


「お約束はされていますか?失礼ですがお名前は?」

「い…い…いいえ…約束はありません。月岡萌絵と言います。」


女性の一人がどこかに電話しているようだ。
その女性は電話を切ると、いきなり立ち上がった。


「ご案内いたします。どうぞこちらへ。」

女性はビルのエレベーターへ案内する。

“ポーン”

エレベーターのドアが開くと、階数ボタンの最上階を押す。

「最上階で人が待っておりますので、このままお乗りください。」


女性はその場でペコリと挨拶すると、エレベーターを降りてしまった。
残された私は、エレベーターで最上階へ上る。


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