離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
小鞠は秋桜を持ちながら、不思議そうに睨めっこをしている。
すると、黎人さんはその花を手に取ると、透明なラッピングからすっと抜き出して、しゃがんでから小鞠の左耳上あたりにそれを翳した。
「……小鞠に似合う。可愛いな」
――その姿を見た瞬間、出会ったときの記憶が、ぶわっと頭の中に広がった。
不安だらけだったお見合いの日。
落ちそうになった椿の花を、黎人さんはそっと優しく私の髪に翳してくれたのだ。
一時はお互いのことが分からなくなったけれど、あの頃から、彼は変わっていなかったんだ。
その事実がとても嬉しく、この人との人生を選んでよかったと、心から思う。
巡り巡って訪れた奇跡みたいな光景に、思わず涙腺が緩んだ。
「……花音?」
「いえ、何でもないんです」
立ち上がり、不思議そうに顔を覗き込んでくる黎人さんに、涙をぬぐってから微笑んだ。
それから、黎人さんの唇にそっとキスをする。
出会った日を思い出して、愛しさ余って触れてしまった。
黎人さんは、そんな私のキスの動機なんてつゆしらず、ただただ驚いている。
「……急だな」
「すみません、つい」
「相変わらずお前は、俺を振り回すのが上手い」
「ん、黎人さ……」
顎を上向かされ、チュッとキスをし返される。
思ったより長いキスが続き、甘い雰囲気になりかけるが、小鞠がベランダに出ようとしてぐずっていることに視界の端で気づいた。
二人で慌てて窓際にいた小鞠を回収しに行き、小鞠はそのまま黎人さんに抱きかかえられた。
「お外出るのーっ」
「分かった分かった」
小鞠に言われるがままに、私たちはベランダに出た。
広尾の閑静な住宅街が目の前に広がり、上を見上げると、爽やかな青空が広がっている。
家の目の前にある公園には、珍しく十月桜が咲いていて、今がちょうど満開の時期だ。
「ぱーぱ、ぎゅってして」
「はいはい、もうしてるよ」
小鞠にすっかり甘い黎人を見て、隣で思わずにやけてしまう。
まさかこんな穏やかな未来が待っているだなんて、思ってもみなかったから。
……一度手離して分かった。本当に大切なものが、今ここにあると。
もう二度と手離さないと、心の中でそっと誓う。
「晴れてるけど、少し風が強いな。桜の花びらも、大分床に散ってる」
「本当ですね。一応小鞠の洗濯物も、取り込んでおきますか……きゃっ」
すると、黎人さんはその花を手に取ると、透明なラッピングからすっと抜き出して、しゃがんでから小鞠の左耳上あたりにそれを翳した。
「……小鞠に似合う。可愛いな」
――その姿を見た瞬間、出会ったときの記憶が、ぶわっと頭の中に広がった。
不安だらけだったお見合いの日。
落ちそうになった椿の花を、黎人さんはそっと優しく私の髪に翳してくれたのだ。
一時はお互いのことが分からなくなったけれど、あの頃から、彼は変わっていなかったんだ。
その事実がとても嬉しく、この人との人生を選んでよかったと、心から思う。
巡り巡って訪れた奇跡みたいな光景に、思わず涙腺が緩んだ。
「……花音?」
「いえ、何でもないんです」
立ち上がり、不思議そうに顔を覗き込んでくる黎人さんに、涙をぬぐってから微笑んだ。
それから、黎人さんの唇にそっとキスをする。
出会った日を思い出して、愛しさ余って触れてしまった。
黎人さんは、そんな私のキスの動機なんてつゆしらず、ただただ驚いている。
「……急だな」
「すみません、つい」
「相変わらずお前は、俺を振り回すのが上手い」
「ん、黎人さ……」
顎を上向かされ、チュッとキスをし返される。
思ったより長いキスが続き、甘い雰囲気になりかけるが、小鞠がベランダに出ようとしてぐずっていることに視界の端で気づいた。
二人で慌てて窓際にいた小鞠を回収しに行き、小鞠はそのまま黎人さんに抱きかかえられた。
「お外出るのーっ」
「分かった分かった」
小鞠に言われるがままに、私たちはベランダに出た。
広尾の閑静な住宅街が目の前に広がり、上を見上げると、爽やかな青空が広がっている。
家の目の前にある公園には、珍しく十月桜が咲いていて、今がちょうど満開の時期だ。
「ぱーぱ、ぎゅってして」
「はいはい、もうしてるよ」
小鞠にすっかり甘い黎人を見て、隣で思わずにやけてしまう。
まさかこんな穏やかな未来が待っているだなんて、思ってもみなかったから。
……一度手離して分かった。本当に大切なものが、今ここにあると。
もう二度と手離さないと、心の中でそっと誓う。
「晴れてるけど、少し風が強いな。桜の花びらも、大分床に散ってる」
「本当ですね。一応小鞠の洗濯物も、取り込んでおきますか……きゃっ」