俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
穏やかなる時間
「うわぁー」

晴れて倉瀬と心を通わせた奈々は、目の前のタワーマンションを見上げて感嘆の溜め息を付いた。

「俺の家に来いよ」と何の躊躇いもなく言う倉瀬に奈々は両親に挨拶をするのかと構えたが、倉瀬は一人暮らしをしていてそこに奈々を招いただけだった。

拍子抜けすると共に、それはそれでドキドキする。緊張しながら倉瀬についていくと、駅前にそびえ立つ立派なマンションへ入っていく。

「く、倉瀬さん。確認なんですけど、一人で住んでいるんですよね?」

「ああ、そうだけど。何かあったか?」

「い、いえ」

家族と共に昔ながらの日本家屋に住んでいる奈々は、見るもの全てが新鮮で興味深い。

エントランスへ入る前にセキュリティが掛けられていて、住人以外は勝手に入れないようになっている。

ロックを解除して中に入ると、広々としたエントランスには高級そうなソファが置いてあり、壁側には大きな花瓶に立派な花が生けてある。心なしか良い香りまで漂っていて、到底一人暮らしをしているとは思えない贅沢なマンションだ。

(うちとは大違いだわ……)

駅から外れた田園風景が広がる中の、小さな一軒家に家族と住む奈々には無縁な場所である。

完全にお上りさん状態の奈々に倉瀬は爆笑し、奈々は恥ずかしくて頬を染めながらむくれた。

そして今日も、何度目かの訪問だ。
いつ来ても、慣れない。
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