王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

「ああっ、それはもういいのです! 私、早く行かなくてはなりませんものね。あなた、玄関まで一緒に行ってくださるのでしょう! お願いしますわ」

 急に態度を変えたカメリアは、フリードのほうをチラチラと見ている。

「……そうよね。急いで西宮殿に行かないといけないもの」

「私もお見送りいたします」

 フリードが厳しい顔つきのまま後からついてくるから、カメリアの歩きが少しぎこちない。やはり王宮の使用人たちにとって、黒龍騎士団員はかなり怖い存在なのだ。

 それでもモテてしまうのが、シルディーヌには解せない。

 ペペロネたちが言っていたように、たしかに団服を着た彼らは凛々しくて素敵に見えるし、愛される特別さを感じたいというのは分からなくもない。

 けれど、団員きっての気品と優しさを備えたフリードでさえ怖がっているのだ。恋をしたくても、これでは接近することもできないではないか。

 ──みんな、矛盾してるわ。

 カメリアは規則を破ったことの恐れもあるだろうが。

「二度と宮殿を間違えたらダメよ」

「ええ、きっと、そうしますわ」

 玄関で「ごきげんよう」とあいさつするカメリアの笑顔は、引きつっている。

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