王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
シルディーヌみたいに命の危機を感じなかった分、カメリアは幸運だったと教えてあげたい。そんな気分で、小さく手を振った。
カメリアが去っていく様子を真剣な表情で見ていたフリードは「おかしいですね」と呟き、玄関わきに立つ警備員になにやら話しかけている。
ほどなくして戻ってきたフリードの顔つきは、今までに見たこともないほど鋭利になっていた。
「どうかしたの?」
「いえ……シルディーヌさん、さきほど彼女は、なにを要求していましたか?」
「ここに来た記念に、アルフの部屋を見たいって言っていたわ」
「そうですか。彼女は新人なのでしょうか。今の時期に侍女の増員があるのは異例なんです。侍女長に確認してみます」
「カメリアが怪しいってことなの?」
「可能性の問題ですよ。少し気になることがありますので、新入団員たちに探らせます。彼らにはいい実践になりますから、一石二鳥ですね」
少々剣呑な雰囲気だ。けれどシルディーヌには、そばかすのある素朴な侍女が大胆なことをしでかすとは思えなかった。