王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 ナイフを投げた団員が茂みを散らして走っていき、シルディーヌは震える声で残った彼に尋ねた。

「今のは、カメリアなの?」

「どうですかねぇ。フードを被っていて顔が見えませんでしたから、性別もわかりません。だけど、奴らは、団長の弱みを握ろうとしてるみたいっすよ」

「え、スパイって何人もいるの?」

 ブロンドの騎士はバツが悪そうな顔をして、人差し指でこめかみのあたりをポリポリと掻いた。

「あ~、そうっすね。だから早く宮殿に行きましょう。別口が出るかもしれませんし」

「違うところのスパイもいるの?」

「可能性の話っすよ~。あ、もう少し、俺の近くに寄ってください。そのほうが守りやすいんで」

 騎士が一緒にいるのに茂みに潜んでいた諜報員。アルフレッドの弱点を探してどうするつもりなのか。

 眼力だけで生き物の心臓を止めそうな鬼神の団長には、弱点など微塵もないように思える。

 でも、本人がいないのに弱点を探れるのかしら? と、シルディーヌは首を傾げてしまう。

 それに複数入り込んでいるのは問題だと思う。王宮の警備は隙だらけということになるのだ。

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