王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 業務的な挨拶をして歩き出すと、無言のままスッと定位置につく。フリード曰く、つかず離れず、何事か起こればすぐに対応できる距離らしい。

 シルディーヌの斜め前を歩くブロンド髪の騎士。アルフレッドほどの身長はないけれど、髪型が似ているからついチラチラと見てしまう。

 そして遠い空の下にいる彼に思いをはせるのだ。

 ──今ごろ、どこにいるのかしら。

「止まれ」

 静かな声とともにスッと前に出された腕に遮られ、シルディーヌはハッとして立ち止まった。

 前方に、いったいなにがあるのか。団員からはピリッと張り詰めた空気が漂ってきて、シルディーヌの心臓がドクドクと音を立てる。

 そろそろと周りを見るけれど、木々と花咲く花壇があるばかりで人の姿は見えないし気配も感じられない。

「そこだ!」

 鋭く小さな声が出され、シルディーヌの後ろにいる団員から、光るものがヒュンッと飛ばされる。まっすぐに飛んだそれがカッと木の幹に刺さって、小さな刀身を揺らした。直後木の下ある茂みがガサガサッと音を立てて、大きな影が動く。

「リック! 奴を追え!」

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