王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 そうだった! アルフレッドが戻って来たならば、一番にしなければいけないこと。地獄の食堂清掃が待っていることを!

 ──そういえば、理由を聞いてないわ。

「そうよ、アルフに訊きたいことがたくさんあるわ!」

 ひとつ思い出せば、あれもこれも、アルフレッドに尋ねたいことが出てくる。しかし問題なのは、簡単に教えてくれるかどうか、である。

 一番の難関は、ペペロネとキャンディからの依頼の件である。堅物なアルフレッドが協力してくれるか……。

 作戦を思いつかないまま団長部屋に行くわけにいかず、シルディーヌはホールで難しい顔つきをしていた。

「あれ? シルディーヌさんじゃないですか」

 背後から──玄関のほうから聞こえてきたこの声は、困った時の救世主、クマのような体つきの騎士……。

「アクトラスさん!」

 久しぶりに対面する彼に笑顔を見せるシルディーヌに対し、彼は少し神妙な顔つきで近づいてくる。

「昨日は怖い目に遭って大変でしたねぇ。シルディーヌさんに怪我がなくて、ほんとうによかったですよ。もしも傷を負っていたら、王宮内が暗黒に染まるとこでした……」

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