僕の家族になってくれてありがとう
「指輪をジッと見てどうしたの?」

声をかけられ、結衣は「ひゃっ!」と言いながら振り返る。スーツを着た翔がニコニコしながら立っていた。その手には本屋の袋がある。

「翔くん、どうしてここに?」

「仕事、予定より早く終わったから荷物持ちに来たんだ。あと、一緒に夕食作るよ」

「ありがとう」

結衣がお肉をカゴに入れると、「何でさっき指輪ジッと見てたの?」と翔に訊かれる。結衣が顔を上げれば、翔はニコニコしていて結衣は恥ずかしさから顔が真っ赤になっていった。しかし、翔は結衣が答えるまで見つめてくる。

「……幸せだなって思って……」

消えてしまいそうな小さな声で結衣は言ったのだが、翔の耳にはしっかりと届いていた。翔の顔が赤くなり、結衣の頭が優しく撫でられる。

「うん、僕も幸せ」

スーパーから帰ると、二人で協力して煮込みハンバーグ、サラダ、スープを作って食べる。今日あった出来事を互いに話しながら、「おいしく作れたね!」と料理のことを言う。その一瞬に、結衣は心が温かくなるのを感じるのだ。
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