苺にはもうなれない

マーチは逃げ出したポルカを追いかけるように、どこかへ行ってしまった。


「深雪さん、今夜は何を食べたいですか?」
優大くんがキッチンへ移動して、冷蔵庫を開ける。

「えっ、作ってくれるんですか!」
そんなの、嬉しすぎる。



誰かにごはんを作ってもらえるなんて、どのくらいぶりかな。



「……あ。あんまり凝ったものは、作れません」
優大くんが真顔で言うので、
「あはははっ」
と、笑ってしまった。



一緒に作りませんか?と、提案して。
ふたりでキッチンに立ち、冷蔵庫にあったひき肉でハンバーグを作ることになった。


玉ねぎをみじん切りしている優大くんを見て、
「お上手ですね」
と言うと、
「母がこういうことに厳しい人で」
と優大くんは話し始めた。


「『衣食住はきっちりしなさい』って言われて育ちました。『下手でも苦手でも、丁寧に生活しなさい』って」


「丁寧に生活するって、素敵ですね。いいなぁ、憧れます」


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