苺にはもうなれない
「父さん、ただいま」
優大くんが軽く片手をあげる。
それから私の両肩に手を置いて、くるっと半回転させた。
優大くんのお父さんと目がばっちり合う。
「はじ、初めまして!!小森深雪と申します。この度は……」
私の言葉を遮って、
「あー、堅苦しい挨拶はいいですよ!初めまして!優大の父です」
と、優大くんのお父さんはニッコリ微笑む。
「東京からここまで来て疲れたでしょう?何もおもてなしってほどのことは出来ませんが、ゆっくりしていってくださいね」
「いえ、ありがとうございますっ」
頭を下げると、
「まぁまぁ、挨拶はこのくらいで、家に帰ろうかー」
と、優大くんのお父さんが車に向かって歩き出した。
その後ろ姿がどことなく優大くんに似ている気がして、何だか安心する。
車で10分も経たない内に住宅街に着いた。
白い屋根の一軒家。
表札には「武岡」の文字。