STRAY CAT Ⅱ



玄関の扉が開く音と、「ただいまー」と声がする。

隣に立つ蒔が「おとーさん!」と嬉しそうに声を上げるのを見て、一度ガスコンロの火を止めた。



「おかえりーっ」



「おかえりなさい」



リビングの扉を開けて迎えれば、お父さんはぱちぱちと目を瞬かせる。

その後ろには黒田さんがいた。……めずらしい。いつも玄関までお父さんを送って、そのまま帰っちゃうのに。



「ただいま。……なんだ?

蒔、お姉ちゃんに可愛くしてもらったのか?」



「うんっ、してもらったのっ」



ルンルンと嬉しそうな蒔の顔。

お父さんにクリスマスプレゼントでもらっていた服を着せ、その白くて綺麗な肌に、ちょっとだけアイシャドウとチークを乗せて、リップを塗ってあげた。




蒔が、やりたかったこと。

それはわたしの真似をして、メイクをしたいっていうお願い。



せっかくだからとかわいい服を着せて、髪も軽く結んでアイロンで整えた。

おかげで本日の蒔は可愛さ3割増しだ。



「鞠お嬢様も、お綺麗ですね」



「……お世辞ありがとうございます、黒田さん」



「その姿を見せる御相手はどうされたんですか」



「……、うるさいです黒田さん」



蒔に合わせて、わたしも着替えてメイクして、髪を整えて。

まるでデートでもするような格好のわたしに、コソッと話しかけてくる黒田さん。蒔はお父さんに抱っこされて、楽しそうに笑ってる。



< 108 / 112 >

この作品をシェア

pagetop