STRAY CAT Ⅱ
玄関の扉が開く音と、「ただいまー」と声がする。
隣に立つ蒔が「おとーさん!」と嬉しそうに声を上げるのを見て、一度ガスコンロの火を止めた。
「おかえりーっ」
「おかえりなさい」
リビングの扉を開けて迎えれば、お父さんはぱちぱちと目を瞬かせる。
その後ろには黒田さんがいた。……めずらしい。いつも玄関までお父さんを送って、そのまま帰っちゃうのに。
「ただいま。……なんだ?
蒔、お姉ちゃんに可愛くしてもらったのか?」
「うんっ、してもらったのっ」
ルンルンと嬉しそうな蒔の顔。
お父さんにクリスマスプレゼントでもらっていた服を着せ、その白くて綺麗な肌に、ちょっとだけアイシャドウとチークを乗せて、リップを塗ってあげた。
蒔が、やりたかったこと。
それはわたしの真似をして、メイクをしたいっていうお願い。
せっかくだからとかわいい服を着せて、髪も軽く結んでアイロンで整えた。
おかげで本日の蒔は可愛さ3割増しだ。
「鞠お嬢様も、お綺麗ですね」
「……お世辞ありがとうございます、黒田さん」
「その姿を見せる御相手はどうされたんですか」
「……、うるさいです黒田さん」
蒔に合わせて、わたしも着替えてメイクして、髪を整えて。
まるでデートでもするような格好のわたしに、コソッと話しかけてくる黒田さん。蒔はお父さんに抱っこされて、楽しそうに笑ってる。