STRAY CAT Ⅱ
「距離を置かれているとか。
先日は指輪を受け取って嬉しそうだったと、社長からお聞きしましたが」
「色々あるんです」
傷をつけたくないし、基本的に部屋のジュエリーボックスに入れてある恭からの指輪。
いまも料理中で付けていなかったのだけれど、指輪をつけることが最近増えたから、付けていないとなんだかそわそわする。
「それより、どうされたんですか?
いつもは玄関で帰っちゃうじゃないですか」
「ああ、お嬢様方へのご挨拶です。
今年も1年お世話になりました」
「……、こちらこそお世話になりました。
特に黒田さんには、本当に」
社長秘書という立場。
わたしとお父さんが和解するまでの間、彼は板挟みにされてやりづらかったに決まってる。
「お身体は大丈夫ですか?
わたしでよければ、色々と相談に乗りますが」
「……ありがとうございます。
黒田さん。このあとご予定とかってあります?」
「ありませんよ」
「、じゃあ、よかったらご飯食べていってください。
今日の夕飯は鍋ですし、お父さんさえ大丈夫ならお酒も」
なんだか、「ありませんよ」が食い気味だった気がするけど。
断られそうな気がしつつ、一応誘ってみれば。
「……ではお言葉に甘えます」
めずらしく黒田さんは、その誘いに乗ってくれた。