STRAY CAT Ⅱ
手に持っていたノートらしきものを、鞠がバッグに片付けているのが見える。
そっち側へと歩きながら聞けば、紗七は「徒歩」と短絡的に告げた。どうやらこの近くに住んでるらしい。
「ん、なら気をつけて帰れよ」
「すぐ近くだから大丈夫よ」
「じゃーな」
「……うん。また明日もよろしく」
紗七とお疲れを言い合って、立ち上がった鞠の元に向かう。
ふわりと嬉しそうな笑みを浮かべた鞠を見て、無意識に入っていた肩の力が抜けた気がした。
別に一緒に帰る約束をしていたわけではないが、当たり前のように俺のことを待っててくれたらしい。
ぽん、とその頭に手を乗せて撫でる。
「お疲れ。大丈夫だったか?」
「恭もお疲れ様。
うん、すごく親切に教えてもらったわよ」
「よかったな。俺はすげー疲労困憊だよ」
デキる彼女は帰りの準備もしてくれていたようで。
正面入口を出ると、社員がほとんどいないビルの目の前に横付けされた橘花の送迎車。それに乗り込んで、息苦しさにようやく制服のネクタイをゆるめた。
「……恭」
「ん?」
じ、と俺のことを見る彼女。
どした?と聞き返せば、首を横に振る。