STRAY CAT Ⅱ
本気で、もう手放せないと思う。
婚約者の話があったから。"あの一件"で、あいつが此処を離れざるを得なくなったから。あいつが、婚約者という立場を選ぶことはもう出来なかったから。
いろんなものが重なって、落ち着くところに落ち着いてる今。
もし再会していなかったら。俺はあとから鞠の結婚を知って、自分の立場を最後まで話せなかったことを、きっと一生恨んだだろう。
「メリークリスマス」
同じ言葉を返すだけで、嬉しそうに笑ってくれる。
……あんま伝わってねーかもしれねーけど、一緒にいられるの、ちゃんと嬉しいんだからな。
「ねえねえ、ルームウェアの感想は?」
「ん? すげーかわいい」
仲の良い暖だろうと、鞠のことは譲れない。
顔を赤らめた鞠に追い打ちをかけるように額にキスして、腕に抱えたままのクリスマスプレゼントについてのお礼をもう一度告げる。
「テキトーに動画見て、そのあと寝るか」
「うん。そうする」
"クリスマス関係ないけど"と言いながら、鞠が作ってくれた温かいシチューを食べて。
一緒のベッドに潜り込んで、当たり前のように一緒に一日を終える日常の中に、たくさん笑ってくれる鞠がいて。
「眠くなったら寝てもいいぞ」
「ふふっ、ありがとう」
いや、幸せすぎだなマジで。
片手でスマホを支え、もう片方の手で鞠の頭をそっと撫でる。その手つきに安心したのか、しばらく一緒に動画を眺めていた鞠は、気づけば寝息を立てていた。
「おやすみ、鞠」