日陰のベンチで、あなたに会いたい

あれ、もしかしてここでお昼食べたいのかな?と。

晴れの日はだいたい私がここ使っちゃってるし。

教室にいるといたたまれなくてここに来てるけど、ここ使いたいなら譲ろうかな。
ここ快適だから好きだけど、私だけの場所じゃないし。

広げていたお弁当をパパッと畳み、この場から去る準備する。

「もしかしてここ使いたいんですか?
だったら私、違うところで食べるので失礼します」

立ち上がり、この場から離れようとしたら、後ろからパッと腕をつかまれた。

「待って!」

「っ……!」

家族以外の他人から触られることが、小学生の集団下校から止まっている私は、その腕をとっさに振りほどいた。

「あ……急につかんでごめんね。びっくりしちゃったよね」

ずっと笑顔を崩さなかった顔が初めて変わり少し焦りを含む。

「ただ、君と仲良くなりたかっただけなんだ。
……嫌な思いさせたならごめん。
君はこのままここでお昼食べて、僕もう行くから」

今度は、先輩が立ち上がり私に背を向けて歩き出した。

去っていく後ろ姿に、なんとなく哀愁を感じた。

『仲良くなりたかった』
その言葉が頭の中をこだまする。

それは今まで生きてきて言われたことのない言葉だった。
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