天空の姫Ⅰ ~二人の皇子に愛された娘~
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【魔界】


今日は新月。


新月には友と二人で酒を飲む約束をしている。


いつも通り豪勢な料理を庭に用意し従者はすべて下がらせる。


友の月影は天界の者だ。幼い頃この庭に迷い込んだことがあり、それから親しくなった。だが、今は天界と魔界は平和条約を結びながらも臨戦態勢が続いている。従者といえ魔界の者には知られない方がよい。


天界は天女が死んでからは不安定だ。


天帝は前代未聞である天女の死のおかげで魔界の侵略や謀反が起きないか疑心暗鬼になっている。天后は皇太子を溺愛し月影を警戒している。


対する月影はその二人のおかげで天界からは異質な扱いを受けている。


あいつは善良すぎるのだ。服も装飾具も望まず、親の愛でさえ義母兄弟に譲る次第だ。


「紅蓮。遅くなった。待ったか?」

「遅いぞ。月影。罰として先に一杯飲め」


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