社長、それは忘れて下さい!?

 社長である龍悟は常に膨大な仕事量を抱えているが、それを感じさせないほどに仕事も早くて丁寧だ。特に記憶力と情報処理速度が卓越しており、一度見た名刺に記された情報は、名前や肩書だけではなく住所や電話番号まで驚くほど正確に記憶している。

「なんかもう、妖怪みたいでしょ」

 チーズがとろりと溶けた熱々のピザをスパークリングワインで流し込むと、溜息交じりに呟く。涼花の隣で同じ飲み物を口にしているのは、高校からの親友で現在はネイルサロンの経営をしている滝口(たきぐち)エリカだ。

「で、涼花はその妖怪に選ばれたってわけね」

 楽しそうに笑うエリカの言葉に、唇を尖らせる。

 龍悟ほどではないが、涼花も記憶力には自信がある。名刺の件でいえば、名前と社名と肩書なれば、今まで名刺交換した人の分は全て記憶している。さすがに住所や電話番号は覚えていないが、並より記憶力に優れているのは事実だった。

「選ばれたっていうか、たまたま異動先が社長秘書だっただけだよ」
「いや~普通に仕事してるだけでいきなり社長の秘書にはならないでしょ~」
「……あと、お酒に酔わないから」
「それなー」

 ピザのチーズをのばしながら、ピッと人差し指を向けられる。ピザを頬張るエリカは、遠い目をしながら

「いいなぁ、日酔いとかなったことないんでしょ。アレほんと辛いんだから」

 と呟いた。
 その台詞に涼花は少し呆れてしまう。
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