社長、それは忘れて下さい!?

「そんなになるまで飲まなきゃいいじゃない」
「飲まなきゃやってられない日もあるのよ」

 エリカの人生を悟ったような瞳をみつめて、涼花は納得したように『そっかぁ』と呟いた。

 そうかもしれない。まだ二十七年しか生きていないけれど、飲まなきゃ、酔わなきゃ、やっていられない日もあるのだろう。

 けれど残念なことに、涼花はどれだけお酒を飲んでも全く酔わない体質を生まれ持った。極限まで飲むとどうなるのだろうと試したこともある。だが単にお手洗いの回数が増えるだけで、酔うことは出来なかった。もちろん二日酔いの経験もない。

 涼花が龍悟の第二秘書に選ばれた理由は、このお酒に強い体質も関係していたのだ。社長秘書であれば、当然接待や会食で飲酒の機会もある。その度にいちいち酔っぱらってしまうようでは仕事に影響があるばかりか、社長や第一秘書の旭にも迷惑がかかってしまう可能性がある。

 前任の秘書が寿退社する少し前に、全社員を対象とした各部署長との個別面談が行われた。その際、業務成績や勤務態度以外にお酒に強いかどうかも確認された。当時新しい第二秘書の選出は秘密裏に行われていたため、涼花も後になってからそれが秘書選出のための面談であることを知った。

「もう一人の秘書さんって、お酒強いの?」
「藤川さん? うーん、どうかな……。泥酔してるのは見たことないけど」
「じゃあ社長は?」
「社長は後からくるタイプ。沢山飲むと次の日ちょっと機嫌悪くなるかな」
「なるほど、お酒に弱い妖怪なのね」
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