社長、それは忘れて下さい!?

2-5. Side:President “Dragon”


「おはようございます、社長」

 龍悟が執務室へ入ると、既に旭が出社して自分のデスクで何かの作業をしているところだった。

「悪いな、旭。今日は秋野は休みだ」
「まぁ、そうでしょうね」

 朝の挨拶と共に告げるが、旭は特に驚いた風もなく龍悟の言葉をすんなりと受け入れた。

 旭のPC画面を後ろから覗き込むとそこには『メールを送信しました』とメッセージが表示されている。宛先は同じルーナ・グループの中でも特に大規模な研究施設を擁する『アルバ・ルーナ社』の食品研究部ラボ室だった。

「昨晩は遅かったので、提出は今朝済ませました。先ほど了承のメールを頂きましたので、気長に待ちましょう。ラボも忙しいですからね」
「悪いな、まかせきりで」
「いえいえ。で、エロ親父ですが、近親者に製薬会社の相談役をしてる人がいるようですね。しかも、その会社の株式を個人資産としていくらか所有しているようです」
「はぁ……十中八九それだろうな」

 旭の説明に、龍悟は呆れた溜息しか出せなかった。

 予想はしていたが、やはり薬の精製には製薬会社が絡んでいる可能性が高いようだ。素人がその辺に生えている雑草をすり潰して作ったものなら話は簡単なのだが、正規の薬品かそれに類似するものなら、薬の成分は巧妙に隠されているだろう。
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