社長、それは忘れて下さい!?

「あのさ、付き合うとか付き合わないとかは別として、涼花自身はどうなの?」
「な、何が?」
「社長のこと好き?」
「えっ……え、と……」

 じーっと目を見つめられながら核心を突くような質問をされたので、しどろもどろになりながら目を逸らす。しかしこの反応を見せている時点で、エリカにはもう涼花の気持ちがわかっているのだろう。

「す、好き……です。……で、でもね!」
「はいはい、わかってるわよ。どうせ釣り合わないとか言うんでしょ」

 案の定、涼花の告白を聞いても、エリカは大きな反応を示さない。それどころか涼花の返答を先読みし、紡ぎかけた言い訳をあっさり遮られてしまう。

「別に釣り合わないってことはないと思うわよ? 仕事してるとこは見たことないけど、涼花は美人だもの」
「お世辞はいいよぉ……」
「嘘じゃないわよ。ただオーラというか……色気がない」
「うっ……ぐ」

 長年の親友は的確かつ手厳しい。

 秘書の仕事はあくまで上司の補佐役だ。本来の役割を考えれば、変に目立つよりはオーラや色気が消え去った人物のほうが適任と言える。だがこれが恋愛対象としてなら話は変わる。オーラも色気もないのであれば、涼花はスタートラインにすら立っていないように思う。

 項垂れて小さくなった涼花の背中をぽんぽん叩いたエリカは、可愛いウィンクを一つ飛ばしてきた。

「社長の言い分は突飛だと思うけど、恋愛をするべきってのは私も同意見だわ」
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