社長、それは忘れて下さい!?

3-3. Feeling uncomfortable


 合コンは散々だった。実際は散々というほどではないが、龍悟とのキスのことばかり考えていてしまいほとんど上の空だった。後からとても申し訳ない気持ちになったが、エリカには『多少元気はなかったけど、普通に会話してたよ?』と不思議な顔をされた。

 特に連絡先を交換する訳でもなく、初対面の人と楽しく食事を取っただけで終わった。恋の実りはなかったが、無事に終えたのでとりあえず及第点だろう。およそ五年間恋愛から遠ざかっていた涼花にしては、上出来なぐらいだ。

 それよりも、涼花は出社して龍悟と顔を合わせたことでさらに悩みが増えてしまった。丸めた人差し指の横を唇に押し当て、ディスプレイをじっとを見つめる。涼花が考え込んでいる仕草を見た旭が、不思議そうな顔をした。

「どうしたの、涼花? どっか具合悪い?」
「なんだ、お前また無理してるのか?」

 旭の問いに、龍悟もデスクから顔を上げて涼花を心配するように声を掛けて来る。

「いえ、大丈夫です。何でもありません」

 すぐに答えると二人は安堵の息をついてまた自分の仕事に戻っていく。いつもと変わらないやりとりだ。
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