スパダリ外交官からの攫われ婚


 (こと)が最初に連れて行ってもらったのはシャンゼリゼ通り、パリの有名な観光地だった。日本とは違うその歴史ある街並みに、琴はワクワクと胸が弾んだ。
 
「本当にお洒落な建物が多いんですね、繊細でとても綺麗な造りに驚きました」

「そうだな。この辺には芸術家が設計した建造物もあるそうだから、この国の人達はきっとそういう事にかなりのこだわりがあるんだろう」

 そう言いながら加瀬(かせ)は琴に丁寧にいろんなことを説明してくれる。通りにある大きなオープンスペースのあるカフェには人がいっぱいで、それだけで琴は引き寄せられそうになる。

「なあ、知ってるか? 実はここでは席によってメニューの料金が違うんだ。カウンターが一番値段が安く、その次がテーブル席、一番高いのがテラスなんだ」

「ええ? そうなんですか! なのにテラス席には人がたくさん……」

 日本では考えられないシステムに驚きながらも、琴はパリを愛する人たちにとってテラス席に座るのにも意味があるのだろうなと感心していた。
 まるで映画やドラマのワンシーンを切り取ったみたいで、琴は夢を見てるのではないかと思うほどだった。
 結局……そのカフェのお洒落な雰囲気にうっとりと目を輝かせていたのが加瀬にバレ、そのまま店内へと連れて行かれてしまうのだが。


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