スパダリ外交官からの攫われ婚
攫われて得た幸せと甘い日々

「どうだった、奈緒(なお)のアシスタントは?」

 (こと)加瀬(かせ)にフラワーアレンジメント教室に通っていることは秘密にしている。奈緒には琴がその時間は彼女のアシスタントの勉強をしていることにしてもらっているのだ。
 もちろん教室が終わった後は奈緒の仕事場で邪魔にならないよう手伝いもしてきているので、加瀬に話すことの全てが嘘なわけではない。

「ええ、新しい事にチャレンジするのはとても楽しいです。中居の仕事も好きですが、経験したことのない色んな事を試してみたくなります」
「そうだな、中居をやっていた時の琴も仕事に一生懸命で可愛かった。どんなに辛い環境でも前を向いて凛としているアンタから目を離せなくなるほどには」

 加瀬の甘い言葉に琴は顔が真っ赤になる。まさかそんな風に思われていたなんて、琴は想像もしていなかったから。
 可愛いなんて男性に言われる経験の少ない彼女に、遠慮なく蕩けるようなセリフを吐いていく加瀬もなかなか鬼畜だ。リンゴのように頬を赤くして「うーあー」と言葉に出来ない唸り声をあげる琴を、加瀬は楽しそうに眺めている。

「これくらいでそんなにも赤くなってテレてくれるから、俺の妻は本当に見ていて飽きない。このままずっと眺めていられそうだな」
「か、揶揄ってるんですね? 志翔(ゆきと)さん!」


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