スパダリ外交官からの攫われ婚

(こと)はもしかして先生と知り合いなの? 彼がやたらと貴女の方ばかりを気にしていたけど」
「知り合いっていうか、一度声をかけられただけなのだけど。その、ナンパとかじゃなく私が困ってるように見えたみたいで」

 あの時、青年はしつこく琴に絡んでくるようなことはしなかった。日本語がとても上手で、ただ親切な人だなと思ったことは覚えてる。
 まさかこんな場所でまた会うとは琴も思いもしなかったが。

「そう? 珍しかったから、先生があんな風に女性に対して自分から話しかけるのは」
「そうなんですか? そんな感じには見えないのに」

 パッと見た感じ華やかな容姿をした講師だ、人懐っこそうにも見えるのに女性には苦手意識でもあるのだろうか? そう気にはなったが、琴はあまり他人の事を根掘り葉掘り聞くのは好きではなかったためそれ以上は黙っていた。

「それでは始めます。今日からの生徒さんもいらっしゃるので、自己紹介しておきますね。私はルカ・ルージェイ、皆さんにはルカ先生と呼ばれています。よろしく」

 やはり人見知りにも女性が苦手にも見えない。ただ陽気で気さくな感じがするのに、琴を見つめる瞳が何故が笑ってないようにも感じた。
 そこにほんの少しの違和感を感じつつも、ジュリアのおかげで琴はその日のフラワー教室での時間を楽しく過ごしたのだった。 


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