スパダリ外交官からの攫われ婚
近付く黒い影と攫われた花嫁

「ねえ(こと)、今日のフラワー教室が終わったら一緒にお茶しない? ちょっと貴女に相談したことがあって」

 いつものように琴の隣に座ってくれたジュリアが、彼女にそう話しかけてくる。いつもはジュリアの方が既婚者である琴を気にして、そのまま別れていたで珍しい。
 だが、いつも助けてくれるジュリアが琴を頼ってくれたのは純粋に嬉しくて……

「もちろんです、私で力になれることがあれば何でも話を聞きますよ」
「ありがとう、琴! 本当に、大好きよ」

 いつもはジュリアが琴の世話役のような立場だが、意外と彼女は琴に甘えるのが好きらしい。今もそんな琴の腕に自分の腕を絡ませて、擦り寄るような仕草でジュリアは甘えていた。
 そんな二人は教室内で目立っていたが、それもいつものことで周りはそのうち気にしなくなって。そのお蔭か、ルカが執拗に琴に絡むこのも減ったので有難くもあった。

「じゃあ、琴の旦那さんに遅くなるって伝えていたた方が良いかもね。心配させちゃうと悪いから」
「そうですね、後でメッセージで連絡しておきます」

 加瀬(かせ)が仕事から帰る前には琴も家には戻るつもりだが、万が一のことを考えてきちんと連絡はしておくことにする。クールな雰囲気なのに過保護な夫は、何か変化があるたびに琴の心配ばかりをするのだから。
 そんな加瀬の姿を思い浮かべて、琴はクスリと笑みをこぼした。


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