スパダリ外交官からの攫われ婚

「いいなあ、そんな風に想い合える相手がいるって。本当に羨ましいよ、(こと)は」
「ジュリさん? でもジュリさんだって……」

 そう言いかけて琴はふと思い出した、確かであった頃はジュリアはルカの事が気に入っていると言っていたはず。だがいつも琴にちょっかいをかけてくる彼をジュリアは嫌そうに追い払うばかりで。
 好きなら、それをチャンスに自分をアピールすればよいのにジュリアは決してそうしなかった。それはなぜなのか?

「ジュリさん、聞いていいですか? ジュリさんはルカ先生のことが好き、なんですよね?」
「……そうね、多分好きなんだと思うわ」

 どうやら出会った時とジュリアの気持ちに変化はないらしい、ならば尚更だ。彼女のその想いに行動が全く伴っていない。その理由が琴には分からなくて……

「じゃあ、何故ジュリさんはルカ先生をいつも邪険に扱うんですか? あれではまるで、ジュリさんが先生を嫌っているように見えると思うのですが」
「仕方ないわよ、琴にちょっかい出してる時の彼が私は嫌いだもの」
「それって……もしかしてヤキモチ、ですか?」

 好きな人が別の女性に構っていれば、良い気分はしないだろう。琴だって加瀬(かせ)が他の女性と仲良くしてると胸がなんとなくモヤモヤしてくる、それと同じことだ。
 そんなことを拗ねたように話すジュリアが可愛くて、琴は彼女を抱きしめたい気持ちになる。


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