スパダリ外交官からの攫われ婚
「だって仕方ないじゃない、娘たちに贅沢させたいし私だって欲しいものもあるの。今まで面倒見てあげたんだから、琴さんだってそれくらい恩返しするべきでしょう?」
あまりにも自分勝手なその発言に周りにいた全員が言葉を失う。自分や自分の娘だけは特別で、血の繋がらない琴は継母たちの役に立つのが当然だという考え方に唖然としてしまう。
優しい優造のそばにいて、美菜はどんどん我儘になり自分の事しか考えられなくなったのか。
「君は琴に自分の娘のように接すると僕と約束したはずだ。それなのに……」
美菜の発言にショックを受け、優造はその場で項垂れる。今まで美菜にいいように言いくるめられていたのだと気付き、何も言えなくなってしまったようだ。
「お父さん……」
それでも琴はこの見合いや継母を父が止めてくれたことが嬉しかった。自分は父にも見捨てられてしまったのかと諦めていたから。
「人が良すぎたんだな、あんたの父親は」
「そうだったみたいです。加瀬さん、どうもありがとうございます」
そう言って琴がふんわりと微笑むと、それを見た加瀬は少し驚いたような顔をした。