スパダリ外交官からの攫われ婚


 それはあまりにも酷すぎる話で、聞いた琴はショックで頭の中が真っ白になる。まさか本当に継母はそのお金欲しさに(こと)准一(じゅんいち)に嫁がせようとしたのか?

美菜(みな)さん、本当なのか? 君はそんな事のために琴を……?」

「違うわ! 私はそんなつもりじゃなくて、本当にこの旅館のためを思って!」

 ショックを受けたのは琴だけではない、夫である優造(ゆうぞう)は真っ青な顔で美菜に問い詰めている。まさか自分の娘がそんなことに利用されようとしていたなんて、彼は思いもよらなかったようだ。
 妻である美菜を信じ疑うことをしなかった優造、彼はそれがどれだけ琴を苦しめていたのかも知らなかったのだ。

「旅館の経営に問題はない、美菜さんにもそう言ったはずだ! 君は僕の娘になんてことを……!」

「これはどういうことなの、美菜さん! ちゃんと私たちにも説明して頂戴」

 琴が話すことが出来なくても、優造と准一やその姉が美菜を問い詰め逃がしたりはしない。三人に迫られて美菜は諦めるようにその場にへたり込んで俯いた。


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